ちゅらかじとがちまやぁ

肝高の阿麻和利  グスク公演with東儀秀樹

沖縄、うるま市、与勝半島勝連地区の中高生で演じられる現代版組踊「肝高の阿麻和利」。
演出家・南島詩人の平田大一さんが演出を手がけ、延べ7万人を動員している。
今日は、阿麻和利が実際に居城していた世界遺産勝連城跡を舞台にして公演される特別な日だ。今夜は雅楽界の貴公子東儀秀樹さんが特別に出演。客席には市川団十郎さん夫妻の顔も見えた。
会場に着いたころはまだ明るく、全体に曇リ空だったが雨の心配は無さそうだ。
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暗くなってきて城壁を照らす照明が独特の雰囲気をかもし出す。
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いよいよ日が落ちて、暗がりを進む黒い影。平田大一さんが、城壁に手を合わせてマイクを握る。元気な声が響き渡りいよいよ開演だ。
まずは東儀秀樹さんのライブで幕を開ける。お母さんの笙、お姉さんの龍笛、そして東儀さんのひちりきの三人での演奏が始まる。東儀さんの説明で、笙は天からの光、龍笛は空を飛ぶ龍、そしてひちりきは地上の人間の声を表すという。
勝連城の城壁をバックに、現代のシンセサイザーをアレンジされた日本古来の楽器の音が響き渡る。そのときから風が変わったように感じる。
約30分の演奏が終わり、いよいよ本編が始まる。音は全てきむたかバンドの生演奏。きむたかバンドのメンバーも地元の中高生が中心になっている。
そして出演者。素人の中高生だけとはとても思えないダイナミックな踊り。ロック調の曲から沖縄音楽まで多様な楽曲がぴたりとはまり、素晴らしい組踊りが続いていく。
勝連の悪名高い望月按司を、海からサバニを漕いで現れた阿麻和利が中心になって追放する。そして前半の大団円、農民、海人が歓喜の踊りを舞う。総勢100人近くの喜びの踊りに観客のボルテージも一挙に上がる。ボクは情けないことに涙が溢れてきた。
休憩を挟んで後半は、ノロの荘厳な祈りから始まる。
勝連城を縦横に使い、見事な演出だ。そりゃそうだろう、東京ドームにも納まりきれないような巨大な舞台はCGでも書き割りでもなく本物なのだ。それを様々に工夫された照明や、ときには本物の火を使って存分に使いこなされている。
物語は進み、首里の悪巧みにはまった阿麻和利が暗殺される。
そして・・・・・
フィナーレに近づき、総員が現れ踊りだす頃、それまで雲に隠れていた月が姿を現した。
照明に照らされた舞台の幅は50mを越え、その幅一杯に気持ちのこもった一生懸命な踊りが繰り広げられている。完璧なのである、完璧・・・・・・
城壁のうねる曲線、斜めにせりあがっている石垣の直線、右側からぐっと回り込んでいる階段、舞台になっている広場は微妙に傾き、さらに客席に向かって坂になっている。水平や垂直の線がなく、それらの舞台に絶妙な配置で木や茂みが見える。
雲間にぽっかりと開いた隙間には下弦の月。その位置は城壁の左斜め上。
月の下の雲は月光に照らされて金色に輝いている。人によっては龍に見えたという。
見開いた目の視界いっぱいにそんな光景が広がっている。
さらに風、風にはためく様々な衣装、踊り手たちの笑顔。
この日この場所この時間に存在させてもらえる恍惚感を感じる。

そのとき頭になぜか浮かんでいたのは、映画「ALL THAT JAZZ」の一場面。
ブロードウェイミュージカルの奇才ボブ・フォッシーが自ら製作した自伝的映画で、ロイ・シャイダー演じるジョー・ギデオンが製作に行き詰まり、ジェシカ・ラング演じる死神に独白する。
「この薔薇を見ろよ、完璧なんだ、完璧パーフェクトだ、俺は神様に聞きたい、どうやったらこんな物が造れるのかと」
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全ての演目が終わり、城から下る坂道に演者たちが並んで客を見送る。そのとき彼ら彼女らを間近に見て改めて認識した、こんな子供達が演じて踊って唄っていたのか!

ありがとうありがとうと一人ひとりに言いたいが、口を開くと涙が出そうで、ただ黙ってうんうんと笑顔で頷きながら坂を下る。

パンフレットより
肝高(きむたか)とは、「心豊か」「気高い」「品位ある」などを意味し、沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」にしばしばみられる古語。勝連および勝連城の美称。


うるまという土地で生まれ育ち、肝高の精神を誇りに思って、自ら志願して猛練習を積み重ね、こんなにも大勢の人を感激させる。そんな体験が出来る子供達が羨ましく、これだけの演出を手がけた平田大一さんは凄い人なんだと改めて認識した。

翌18日は、首里三山の旗頭が演出に参加し、550年余の年月を経て首里と勝連の邂逅を表現する予定だったらしいが、残念ながら雨のためきむたかホールでの公演となった。
これを書いている20日。KUWAさんと話す機会があったが、KUWAさんがぽつりと言う「まだ阿麻和利は首里を許してなんでしょうかね」・・・・・・

次回公演は高校3年生にとっての卒業公演となります。
平成20年2月2日・3日
きむたかホールにて
昼夜2回公演で全席指定2000円
お見逃し無くっ!
by tenmorimori | 2007-11-17 08:53 | 祭り・イベント | Comments(8)
Commented by サト at 2007-11-20 12:08 x
グスク公演観に行きたかったです。う~残念。
きむたかホールの公演で感激していたんだからグスクでやられたら
それはそれは・・ですよね。来年もあるといいな。
Commented by くま at 2007-11-20 13:27 x
この短い文章と数枚の写真だけで鳥肌が収まりません。 いいなぁ。
12月の1・2・3日の沖縄のイベントを一生懸命探しましたが、NAHAマラソンとキャンプフォスターのフリーマーケットくらいしか見つかりませんでした(笑)。
Commented by tenmorimori at 2007-11-21 00:01
>サトさん、お久しぶりです、お元気ですか?
感激しますよね!そりゃこんな舞台装置でやられた日にゃ・・・です。
来年もきっとあるはずです、絶対行くぞっ!

>くまさん、この子供達にはもうやられました。
子供が居るくまさんが見たら、顔面ぼろぼろになっていたはず。
小熊たちにも見せてやりたい、本当に!
勝連に引越ししてもらって、奴ら3人を参加させたいなぁ(笑)
Commented by yurippe at 2007-11-21 00:39 x
てんもりさん、こんなに素晴らしい記事を書いてくださって
ありがとうございます。

来年もまたグスクで公演できるよう、私達も
がんばります。

卒業公演は、また格別な雰囲気なので、
ぜひ見に来てくださいね!
Commented by こっこ at 2007-11-21 10:26 x
前回の卒業公演で涙涙で感激しました。勝連城址での公演、鳥肌もんだったんじゃないかと思います。私だったら、始まる前に泣いてそうです。
てんもりさんの帰り道の心境すごく分かります。
今回、旅行と重なって行けなかったのがすごく残念でしたが、この日記で感動をいただきました。ありがとうございます!
Commented by tenmorimori at 2007-11-21 21:12
>yurippeさん、こちらこそ、あんな素晴らしいものを体験させていただいてありがとうございます。
卒業公演にも是非行きたいと思います。
また、来年のグスク公演も是非実現させてください。

>こっこさん、確かKAWA家ホームパーティーでyurippeさんから聞いて話題になり、宗像さんも行かれたんですよね。
ボクは来年の卒業公演には行きますよ。
Commented by ko-taro at 2007-11-25 14:43 x
tenmorimoriさん初めまして

yurippeさんのコメントの通り、同じ場に居た者として素晴しい記事です

以前、中城城跡でボランティアガイドの研修の場に居合わせ事があります
その時、講師の方は『護佐丸も英雄!阿麻和利も英雄!』と教えていました

いま地元の子供達の手によって阿麻和利への評価が変りつつある時代
心の広い阿麻和利さまですから、もう首里(金丸)を怨んではいないと思います
Commented by tenmorimori at 2007-11-26 22:59
ko-taroさん、初めまして。
そうですね、昨夜、那覇での平田大一さんのステージに行きましたが、首里の旗頭の方々も客席に居られました。
時を経て首里も中城も勝連もなく琉球大連立だと思いました。